Q 住宅ローンの延滞3カ月目と、消費者金融からの借り入れが400万円となり、恐ら
く競売にかけられることになりそうです。
こんな状況ですので、最終的には自己破産になると思うのですが、このような場合
でも任意売却をする意味はあるのでしょうか?
同じ結果になるなら、このまま競売にかけられた状態で自己破産をした方が楽だと
思うのですが・・・。どうせ取られてしまう家のためにジタバタするのはバカらしい気
がします。
A 「自己破産をすれば自宅は処分されるのだから、わざわざ任意売却をする意味が
ない」というお考えは、ある意味では間違いではありません。
自己破産する場合は不動産を持ち続けることは不可能なので、ご自宅が人手に渡
ってしまうという意味では任意売却も競売も違いはありません。
しかし、だからと言って任意売却する意味がないかと言えば、そうではありません。
自己破産も任意売却もケースバイケースなので、一概に断言することは難しいです
が、自己破産の前に任意売却することには、一般的に次のようなメリットがあります。
■金銭面でのメリット
(1)破産にかかる費用が安い
自己破産には、「同時廃止」と「管財事件」の2種類があり、破産する人に資産が
ある場合は「管財事件」、ない場合は「同時廃止」となります。
【同時廃止】
手続きが早い。費用が3万円程度と安い。
【管財事件】
手続きに時間がかかる。最低50万円の予納金(管財人費用)がかかる上、代理
人(弁護士)への費用も別途必要。
財産(この場合は自宅)を持っている方が破産する時は、原則として管財事件となり
ますが、経済的に困っている状況の方にとって、50万円以上もの費用を用意するこ
とは並大抵ではありません。
自宅を売却し、資産がない状態になってから自己破産をする方が良いと言われるの
はこのためです。
※ただし、状況によっては、住宅を持ったまま自己破産する方が有利な場合もあります。詳しくはご
相談ください。
(2)引越代など、当面の再出発資金を捻出できる
任意売却をせず競売となった場合は、立退き費用などは出してもらえません。
(3)売却手数料の持ち出し負担はありません
任意売却の場合、不動産の売却にかかる手数料は売却代金の中から支払われ
るため、持ち出し負担が必要になることはありません。
■時間面でのメリット
(1)自己破産手続きが完了するまでの時間が短い
時間の面でも、自己破産の前に任意売却をしておく方が有利と言えます。
上に述べた通り、任意売却後に自己破産する場合は原則として「同時廃止」とな
り、財産を持ったまま自己破産する場合(管財事件)より、手続きにかかる時間が
短かくて済みます。
同時廃止の場合、申し立てをしてから3カ月程度で手続きが終了し、およそ半年
程度で面積の決定がなされます。これに対し、管財事件の場合は、自己破産を
申請してから手続きが終わるまでに少なくとも1年以上かかるのが普通です。
(2)引越の時期を相談できる
任意売却の場合は、買主の方と相談して、ご自宅の引越しの時期をある程度調
整することができます。
これに対し、競売になった場合は、希望を聞いてもらうことはできません。裁判所
から明け渡し命令で即時退去を求められることもあります。
■精神面でのメリット
競売にかけられた場合、その情報は裁判所の公報に載り、たくさんの不動産業
者がご自宅を下見に来ます。
見るからに業者とわかる人達が近所で聞き込みを行うので、あなたの家が競売
にかけられていることはあっという間に近所に知れ渡ってしまいます。
そのため、立退きまでの数カ月間、ご本人はもちろん、ご家族が好奇の目にさら
され肩身の狭い思いをすることになります。
これに対し、任意売却の場合は、見た目には通常の売却と何ら変わりません。
ご近所の目には普通の引越しに見えます。
■保証人への影響
奥様やご両親、お子様などが住宅ローンの連帯保証人になっていませんか?
自己破産すると、保証人には必ず迷惑がかかります。
自己破産し免責を受ければ、破産した本人は全ての借り入れを免れられますが
代わりに保証人が債務(借入)を返済しなければなりません。しかも、この場合、
連帯保証人には一括返済の請求がなされることになります。そのため、連帯保証
人の方も支払不能となることがほとんどで、その方まで自己破産しなければなら
なくなる場合もあります。
このため、お借入が住宅ローンのみの方には、原則として自己破産はオススメで
きません。多重債務の方でも、債務を圧縮して無理のない範囲で返済を続けるこ
とはできないかどうかなど、あらゆる可能性を検討するべきです。
任意売却をした場合でも、連帯保証人の方のご負担を100%回避できるわけで
はありませんが、事前に話し合って、できるだけご負担のかからないよう取り計ら
うことができます。